インクジェットプリント用紙の特性
アワガミファクトリー 竹和紙

【特徴】

アワガミファクトリー A.I.J.P.シリーズ「竹和紙」はその名のとおり、竹を原料にしている。もともと版画用に開発され、それをインクジェットプリント用に対応させた用紙である。
この用紙は一見マット紙に似た外観を持つが、印刷してみるとマット紙よりも輪郭感や発色が柔らかく、絵柄に和紙独特の風合いを加味してくれるのが魅力だ。マット紙の繊細さと和紙の風合いを両立させてくれるので、さまざまな絵柄に対していい意味で無難に対応してくれる安心感がある。
この用紙は用紙厚のバリエーションが用意されており、170g/㎡(用紙厚0.35mm)、250g/㎡(用紙厚0.5mm)に加え、四方耳付き(4辺が直線に裁断されていない)の220g/㎡(用紙厚0.43mm)の3種類がラインアップされている。サイズもA1~A4、17/24/44インチロールと幅広く選べる。
また、竹和紙は両面にプリントすることが可能だ(片面印刷対応紙もある)。両面対応紙はフォトブックにも適しているし、試しプリントの際にも両面を有効活用できる。
蛍光増白剤を使っていないので、経年変化に対して厳しい基準が求められるアートプリントに必要な条件を備えている。

【使いこなし方】(注意点)

インクは基本的に顔料インク、黒についてはマットブラックインクを使用するのがいい。
額装用には厚手の250g/㎡がおすすめ。四方耳付きの220g/㎡の場合は耳の寸法の影響で、画像が用紙の中心からズレてしまうことがある。その場合は最大寸法を実測してカスタムサイズの用紙として扱う。
竹和紙は用紙の反りが出やすいので、プリンターに給紙する前に反りを直してからセットするようにする。
アワガミファクトリーの用紙全般にいえることだが、用紙の表面処理の影響により、プリント時のオートシートフィーダ給紙の際に給紙ローラーの滑りにより、うまく用紙が給紙されないことがある。
対策としては、基本的にフロントトレイ給紙やリア手差し給紙をおすすめしたい。オートシートフィーダを利用する場合は給紙ローラーをこまめに清掃する。

【評価】

1)紙白の印象、蛍光増白剤 → 5

紙白はb*が3程度とわずかに黄色い白。紙白の色は作品づくりの点で向き不向きはない。蛍光増白剤は含まれていないので、光源による色の見え方の変化や経年変化の心配がなく、長期保存性に優れている。

2)風合い(面質、テクスチャー) → 4

テクスチャーは和紙の中では密で滑らかな印象だが、マット紙に比べるとソフトで適度な粗さがある。幅広い絵柄についてマット感とソフト感をほどよく表現できる。

3)階調性、黒の濃度、暗部コントロールのしやすさ → 4

階調特性はマット紙に近く、黒はほどよい濃度感がある。 階調特性にクセがなく、素直な表現。面質の滑らかさと相まって和紙の中では階調づくりがやりやすい用紙。

4)解像感 → 3

和紙独特のソフトな輪郭感があるが、密な面質により解像感もほどよく伴う。

5)発色 → 3

和紙の欠点としてシアン、青、マゼンタ系の濃度がやや苦手で、全体的には発色は控えめとなる。

(総合評価) → 4

全体の印象としてマット紙に近い印象と特性を持つが、マット紙の細密で鮮やかさを、まろやかでソフトな表現に押さえてくれる。黒の締まりも程よくあるので、和紙を初めて扱う方にもおすすめの用紙である。両面に印刷できるし、用途によって厚さを選べるのもうれしい。ただ、見た目には和紙とは見えず、マット紙と区別がつきにくいことがある。

【L*a*b*の測定結果】カラーモード (ICCプロファイル知覚的)

L*
【L*の測定結果】カラーモード (ICCプロファイル知覚的)

a*
【a*の測定結果】カラーモード (ICCプロファイル知覚的)

b*
【b*の測定結果】カラーモード (ICCプロファイル知覚的)

  • L*の階調特性は和紙としては十分な黒の締まりがある。
  • a*は問題ないレベル。
  • 紙白はオフホワイト(b*=3)でさまざまな絵柄に適している。
  •  プリンター:Epson PX-5V、マットブラックインク、Ultrasmooth Fine Art Paper設定(超高精細)
     ICC Profile : X-rite i1Profiler / i1iSis

SC-PX3Vの場合

L*
【L*の測定結果】モノクロモード(SC-PX3V)

a*
【a*の測定結果】モノクロモード(SC-PX3V)

b*
【b*の測定結果】モノクロモード(SC-PX3V)

  • L*の階調特性および黒の濃度はPX-5Vと大差ない。
  • a*は問題ないレベル。
  • 紙白はオフホワイト(b*=3)でさまざまな絵柄に適している。
  •  プリンター:Epson SC-PX3V、マットブラックインク、フォトマット紙顔料設定(高精細)
     ICC Profile : i1Profiler/i1iSis

【L*a*b*の測定結果】モノクロモード(Epson PX-5V)

L*
【L*の測定結果】モノクロモード(Epson PX-5V)

a*
【a*の測定結果】モノクロモード(Epson PX-5V)

b*
【b*の測定結果】モノクロモード(Epson PX-5V)

  • L*の階調特性は素直だが、ディープシャドウがわずかに明るめになる。
  • a*、b*もとくにクセや偏りがないので、モノクロモードで安心して使える。
  •  プリンター:Epson PX-5V、マットブラックインク、 UltraSmooth Fine Art Paper設定(超高精細)

SC-PX3Vの場合

L*
【L*の測定結果】モノクロモード(SC-PX3V)

a*
【a*の測定結果】モノクロモード(SC-PX3V)

b*
【b*の測定結果】モノクロモード(Epson PX-5V)

  • PX-5Vとの濃度差はなく、ディープシャドウの特性は素直。
  • a*、b*もとくにクセや偏りがないので、モノクロモードで安心して使える。
  •  Epson SC-PX3V、マットブラックインク、フォトマット紙顔料設定(高精細)

【用紙テクスチャーとプリント色】

用紙テクスチャーとプリント色

【プリント後の彩度と明度変化】

*エプソンSC-PX5Vによるプリント結果の彩度グラフの見方については、「インクジェットプリント用紙の特性」ページにある「彩度の測定3(HSB表色系)」と「彩度グラフの見方3」、「彩度の判定基準2」をご参照ください。

アワガミ 竹和紙(エプソンSC-PX3V)

アワガミ 竹和紙(エプソンSC-PX3V) 赤
428→[3]

赤(R)は光沢紙ほどの彩度はないが、程よい鮮やかさがある。

[参考値]光沢紙 絹目調(エプソンSC-PX3V)

[参考値]光沢紙 絹目調(エプソンSC-PX3V) 赤

アワガミ 竹和紙(エプソンSC-PX3V)

アワガミ 竹和紙(エプソンSC-PX3V) 黄
517→[4]

黄(Y)は写真表現として十分な鮮やかさと階調のつながりがある。

[参考値]光沢紙 絹目調(エプソンSC-PX3V)

[参考値]光沢紙 絹目調(エプソンSC-PX3V) 黄

アワガミ 竹和紙(エプソンSC-PX3V)

アワガミ 竹和紙(エプソンSC-PX3V) 緑
437→[4]

緑(G)については明度60前後は鮮やかだが、明るくなるにつれ色が淡く見える。

[参考値]光沢紙 絹目調(エプソンSC-PX3V)

[参考値]光沢紙 絹目調(エプソンSC-PX3V) 緑

アワガミ 竹和紙(エプソンSC-PX3V)

アワガミ 竹和紙(エプソンSC-PX3V) シアン
373→[3]

シアン(C)は彩度が全体に低いうえに、明るい色は色が抜けたように浅い。

[参考値]光沢紙 絹目調(エプソンSC-PX3V)

[参考値]光沢紙 絹目調(エプソンSC-PX3V) シアン

アワガミ 竹和紙(エプソンSC-PX3V)

アワガミ 竹和紙(エプソンSC-PX3V) 青
399→[3]

青(B)は苦手な色。全体に鮮やかさはなく、にごった感じの青になる。

[参考値]光沢紙 絹目調(エプソンSC-PX3V)

[参考値]光沢紙 絹目調(エプソンSC-PX3V) 青

アワガミ 竹和紙(エプソンSC-PX3V)

アワガミ 竹和紙(エプソンSC-PX3V) マゼンタ
314→[3]

マゼンタ(M)は彩度が上がらず、地味で薄い色になる。

[参考値]光沢紙 絹目調(エプソンSC-PX3V)

[参考値]光沢紙 絹目調(エプソンSC-PX3V) マゼンタ