インクジェットプリント用紙の特性
ピクトラン 局紙
【特徴】
ピクトラン「局紙」は、ベース紙に証券や表彰状等に使われる越前和紙の一種を使った半光沢紙である。
この用紙の最大の特徴は、半光沢紙という分類の中で、紙白がもっとも黄色い用紙であることだ(紙白のb*は約6程度)。
多くの半光沢紙はニュートラルな白に近いものがほとんどだが、紙白が黄色い局紙はモノクロプリントの雰囲気をより魅力的に演出してくれるという効果がある。
もうひとつの特徴は、階調特性がマット紙に近く、黒がやや浮くということ。
一般的に半光沢紙は光沢紙に次いで階調特性がリニアで、画面で見たコントラスト感でプリントに反映されることが多いが、局紙はシャドウ部分がやや浮いた黒となり、コントラスト感はやや甘くなる。
ただ、そのことがマイナスというのではなく、モノクロプリントの黒を重苦しくせず、中間調を美しく見せる方向にトーンバランスを考えさせてくれる用紙だ。
蛍光増白剤を使っていないので、経年変化に対して厳しい基準が求められるアートプリントに必要な条件を備えている。
【使いこなし方】(注意点)
濃度が出やすい顔料インクがおすすめ。黒インクには基本的にフォトブラックを使う。
テクスチャーはやや強めなので、見る角度によっては照明の乱反射により黒が浮いて見えることを勘定に入れておきたい。
絵作りにおいては黒の濃度に頼ったトーンバランスではなく、黒をある程度浮かせた状態からのトーンバランスにすると使いこなしやすい。
モノクロはもとよりカラープリントにも向いているが、紙白が黄色いので青い色は色が冴えない。青系を基調としたカラープリントについては想定した配色になるかどうかを確認しておきたい。
用紙厚が約0.4mm(0.36mm)あり、用紙のコシはしっかりしているので、プリントの際にはオートシートフィーダではなく、フロントトレイ給紙やリア手差し給紙で行なう。
【評価】
1)紙白の印象、蛍光増白剤 → 4
紙白はb*が6程度とやや黄色い。青系の絵柄の場合はホワイトバランス見直しなどにより紙白との配色を確認する。蛍光増白剤は含まれていないので、光源による色の見え方の変化や経年変化の心配がなく、長期保存性に優れている。
2)風合い(面質、テクスチャー) → 3
やや強いテクスチャーを持っている。見る方向により黒が乱反射して見える。
3)階調性、黒の濃度、暗部コントロールのしやすさ → 4
階調特性がマット紙に近く、黒は他の半光沢紙に比べてやや浮く傾向があるのでその点に注意したい。 マット紙の仕上げと同様、階調作りの際に黒を締めすぎず、やや浮かせた上で階調を作り込むと、この用紙の使いこなしが容易となる。
4)解像感 → 5
半光沢紙のクリアな輪郭感により、解像感はシャープな表現となる。
5)発色 → 5
半光沢紙の中では黒や青色系の濃度がやや苦手であるが、全体的には発色は優れているといえる。
(総合評価) → 4
この用紙は黄色い紙白に半光沢紙が持つ光沢感と、マット紙的階調特性を持つたいへん個性的な用紙だ。こういう傾向の用紙は他に類を見ない。絵柄によって向き不向きはあるが、モノクロプリントにはぴったりだと思う。アートプリントとして品位の高い質感を実現する用紙である。
【L*a*b*の測定結果】カラーモード(ICCプロファイル知覚的)EPSON SC-PX3Vの場合
L*
a*
b*
- L*の階調特性はPX-5Vより黒の濃度が出る(PX-5V: L*≒15、SC-PX3V: L*≒10)。
- a*は少し緑傾向だが、問題ないレベル。
- 紙白は黄色(b*=6)で、半光沢紙の中ではめずらしい。
プリンター:Epson SC-PX3V、フォトブラックインク、写真用紙絹目調設定(超高精細)
ICC Profile : X-rite i1Profiler / I1iSis
PX-5Vの場合
L*
a*
b*
- L*の階調特性は半光沢紙としては黒が浮く。
- a*は少し緑傾向だが問題ないレベル。
- 紙白は黄色(b*=6)で半光沢紙の中ではめずらしい。
プリンター:Epson PX-5V、フォトブラックインク、写真用紙絹目調設定(超高精細)
ICC Profile : X-rite i1Profiler / I1iSis
【L*a*b*の測定結果】モノクロモード EPSON SC-PX3Vの場合
L*
a*
b*
- モノクロモードではPX-5Vより濃度感があるが、ディープシャドウにクセがある。
- a*、b*はクセがなく素直な特性。
プリンター:Epson SC-PX3V、フォトブラックインク、写真用紙絹目調設定(超高精細)
PX-5Vの場合
L*
a*
b*
- L*の階調特性はほぼリニア。
- a*、b*もとくにクセがない。
プリンター:Epson PX-5V、フォトブラックインク、写真用紙絹目調設定(超高精細)
【用紙テクスチャーとプリント色】
【プリント後の彩度と明度変化】
ピクトラン 局紙(エプソンSC-PX3V)
542→[5]
[参考値]光沢紙(エプソンSC-PX3V)
赤(R)の彩度は光沢紙にはやや及ばないものの、光沢紙に近い特性。
ピクトラン 局紙(エプソンSC-PX3V)
660→[5]
[参考値]光沢紙(エプソンSC-PX3V)
黄(Y)については光沢紙並みの高い彩度で表現される。
ピクトラン 局紙(エプソンSC-PX3V)
589→[5]
[参考値]光沢紙(エプソンSC-PX3V)
緑(G)については光沢紙並みの彩度で表現される。
ピクトラン 局紙(エプソンSC-PX3V)
404→[4]
[参考値]光沢紙(エプソンSC-PX3V)
シアン(C)は光沢紙より彩度が低くなってしまう。
ピクトラン 局紙(エプソンSC-PX3V)
553→[4]
[参考値]光沢紙(エプソンSC-PX3V)
青(B)は苦手な色。光沢紙には彩度面で及ばない。
ピクトラン 局紙(エプソンSC-PX3V)
427→[4]
[参考値]光沢紙(エプソンSC-PX3V)
マゼンタ(M)は光沢紙に比べて控えめの彩度とな。
6色の平均点=4.5
ピクトラン[局紙] 千代田路子(Michiko Chiyoda)さんの使用感
半光沢紙でもっとも黄色い用紙
3年前にSAMURAI FOTOの皆さんに手伝ってもらいながら、初めてプリントに挑戦したときに選んだのが、この局紙でした。モノクロ調の植物でプロジェクトをまとめようと思っていたので、紙白が黄色いほうがやりやすいと考えたからです。半光沢紙なので、黒の深みが出ると感じましたし、中間調の美しさも気に入りました。やはり、植物には黄色みがかった紙が適しているとも感じました。ただ、少しマゼンダがかったような色かぶりすることがあって、自分のプリントの腕はまだまだだなぁとも感じさせられました。
強めのテクスチャーと耐刷力が特徴
当時は気づかなかったのですが、プリントして重ねて置いてあったのに全然スレていなかったので、耐刷力がある用紙だということがわかりました。いちばんの特徴はやや強めのテクスチャーですが、そのため、ふわっとした写真よりもカチッとしたもののほうが合うのではないかと思います。黒つぶれしやすいとも聞きましたが、このテクスチャーよって飽きさせないとも感じられ、格調のある仕上がりにもなります。44インチの用紙もあるので、大きい作品を望む方にも使っていただける用紙だと思います。