“What's Art?” by Hiroaki Hasumi

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“What's Art?” by Hiroaki Hasumi

今年(2014年)の夏、フランスのアルルで開催されたフォトフォリオレビューに参加したあと、「私にとってアートとは、人種・国境を越えて、人と人が感動・共感し、よりよい生き方を見つけるためのもの」と思った。その根底には哲学と思想が必要で、オリジナリティーやアイデンティティー、共感、ポジショニング、現代性、人間研究も含まれるべきものだと考えるようになった。

“What's Art?” by Hiroaki Hasumi

しかし、その後、よくよく考えてみると、「自分はよりよい生き方を見つけるためにアートをやっているのか」「そもそもいまの自分の作品にそんな力などあるのか」と疑問が湧いてきた。そこで、自分自身の特性を整理してみることにした。「人を驚かせ、感動させ、喜んでいる姿を見る」のがうれしいし、「好きなことは一生懸命やるが、嫌いなことはしたくない」「真似は嫌いだが、応用は好き」だ。

“What's Art?” by Hiroaki Hasumi

では、何故そのような特性を持つようになったのか。それは本田宗一郎氏の影響が大きい。15歳からバイクに乗り始め、HONDAに入ったのも彼に憧れていたからで、「真似ごとが嫌い。好きことだけで一生懸命やればいい。嫌いなことはそれが好きだとという人に任せておけばいい」という本田氏の思想をそのまま受け継いでいるからである。

“What's Art?” by Hiroaki Hasumi

世界に通用するPhotographicArt 作品を目指している私の作品を見て、「これは写真ですか?」「絵のように見えますから、写真ではないですね」「ここまでやっていいんですか?」と言われるが、前述のような特性を持つ私にとってはこれらの言葉はすべて褒め言葉に聞こえる。

“What's Art?” by Hiroaki Hasumi

そうして、再び、「私にとってアートとは何か?」と塾考したとき、それは「既成概念の破壊によって、人々に夢・発見・感動を与えること。人間の思考の素晴らしさを伝えたい」という言葉に結ばれた。人が感動する姿を見て自分も喜ぶ。ダミアン・ハーストのホルマリン漬けの牛も、私には思考の素晴らしさが結実したものとして映る。

“What's Art?” by Hiroaki Hasumi

作品を作るうえで私が影響されたのは、東山魁夷氏の『道』。1950年に発表された作品で、1945年に終戦を迎えた戦後の日本の進むべき道を描いている。混沌とした時代にこれを描いた作者の純粋な表現と時代性の高さに感動した。これがアートだと感じられ、東山魁夷氏の作品のなかでも最も好きな作品のひとつである。

“What's Art?” by Hiroaki Hasumi

次に好きな作家は福田平八郎氏。『漣(さざなみ)』は銀箔の上に一色のみで描いている。『雨』という作品も瓦だけを描くことによって、降り出した雨を表現したもの。普通なら風光明媚なところに行ってきれいなものを描きたくなるが、ともに身近なもの。この身近なものをアートに持っていく作者の感性に感動した。

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長谷川等伯氏の『松林図』も感動した作品。洋画は遠近法で描かれるが、日本画は一般的には平面的に描かれる。しかし、この絵は墨の濃淡だけで遠近を表現している。日本画でこのような表現は見たことがないし、いまでもこのような日本画が描ける人は少ないだろう。写真でこのような表現をしたいとも思った。

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アメリカのポップアートの巨匠アンディ・ウォーホール氏の『32 Cambell’s Soup Cans』も好きな作品。すべて味の違うスープの写真を並べて、大量生産というアメリカ文化と資本主義を表現することで時代を風刺している。このように私が影響されている作品はシンプルだが、言いたいことが強く伝わってくるもの。私もこのような表現を目指していきたいと思っている。