“What's Art?” by Kazuhiro Sasaki

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“What's Art?” by Kazuhiro Sasaki

「アートとは何か」と自分に問う前に、佐々木さんはまず「人間は何のために生きるのか」を考えた。そして、日本人の思想の根幹にある武道などの「道」のつくものの考え方を追求していった。さらに著名な芸術家などが残した言葉を辿っていくと「アートとは道である」という答えに行き着いた。

“What's Art?” by Kazuhiro Sasaki

「何のために生きるのか」と考えると、究極的に生物はみな子孫繁栄のために生きているといえる。その動物的本能のために食べて、寝て、子育てをする。しかし、現代の人間について考えてみると、あきらかにはそれだけではない。文明を築いた私たち人間にはいつからか欲望が芽生え、それが他の生物との違いを示すものだといえる。「アート」はその欲望の1つであるという仮説が立てられる。

“What's Art?” by Kazuhiro Sasaki

「芸術とは表現者あるいは表現物と、鑑賞者とが相互に作用し合う作用し合うことなどで、精神的・感覚的なヘ変動を得ようとする活動である」と辞書には書かれている。
もし、アートが欲望を満たすものであるのなら、「自己を表現するために行なう活動を他の人と共有」できれば、欲望は満たされたことになる。
ただし、アートはただの欲望であるとはいえない。何をどう表現してもいいが、一定のルールが存在するからこそ、ただの欲望とは区別されるものである。

“What's Art?” by Kazuhiro Sasaki

佐々木さんは、そのルールとは「どの分野にしろ、歴史と伝統を重んじ、過去を振り返りつつも新しいことに挑戦している」ことではないかと推察した。
そして、アートの1つの分野を極めていくためには「つねに前を向いて、進化を拒まず、過去を重んじながらも単純に真似をするのではなく、人の意見を聞き入れていく」ことが必要ではないという思考に及んだ。
小さな積み重ねによってつねに進化をし続けないと、そこから衰退が始まる。それもアートの側面であると考えられた。

“What's Art?” by Kazuhiro Sasaki

アートを極めるためには「つねなる進化」が必要不可欠であると理解できた一方で、新しいことに挑戦するのは簡単ではないと思えた。
そこで、一流のアーティストであったピカソやダリが残した言葉を探っていくと「真似をする」というキーワードが見つかった。ただし、単なる模倣ではなく、先人たちの行いから何かを学び、そこから自分独自の新しいものを見つけていくのもいい方法ではないかと感じた。

“What's Art?” by Kazuhiro Sasaki

西洋絵画の潮流を広く学び、ピカソやダリの偉業に注目することも大切だが、日本人としては、この国で古来から大切にされてきた「武道」について学ぶべきかもしれないと考えた。それは剣道、柔道、茶道、華道など「道」のつくものが海外でも注目され続けているからで、これらは生き方にもついて言及するような「道」であるからだった。

“What's Art?” by Kazuhiro Sasaki

武道では、「人の教えに基づき、修練し、心技体を鍛えて技術の研鑽を行い、人格を磨いて道徳心を高め、礼儀を重んじることを覚える。これにより人格形成を図る」。
アートは欲望を満たすものであるという考えとは矛盾するようにも感じられるが、佐々木さんにとっては武道のこの考え方がアートそのものであると心に深く響いた。
徳川家康の言葉もまた、アートを極めための難しさとも受け取られた。

“What's Art?” by Kazuhiro Sasaki

相田みつをの「道は自分つくり、道は自分で拓く。人がつくったものは自分の道にはならない」という言葉に遭遇したときは、「道」を「アート」という言葉に替えると、さらに納得できた。
ということから「アート=道」であるという結論に至った。そして、アートを極める努力をすることこそが人生であり、自分の生きる目的だとはっきり自覚することができたという。