エプソンニューフォトフォーラムに作品を展示していただきました!


エプソンニューフォトフォーラム名古屋会場の展示の様子。来場された皆さんがそれぞれの違いに本当に驚かれて、その加工の課程などを熱心にご覧いただいていました。
エプソンニューフォトフォーラム名古屋会場の展示の様子。来場された皆さんがそれぞれの違いに本当に驚かれて、その加工の課程などを熱心にご覧いただいていました。

今回のもと画像。メンバーである木戸さんの撮影。加工技術の向上のために、あえて失敗作を提出していただきました。逆光で普通に撮影しているため手前が暗くなっています。
今回のもと画像。メンバーである木戸さんの撮影。加工技術の向上のために、あえて失敗作を提出していただきました。逆光で普通に撮影しているため手前が暗くなっています。

※展示された作品はディスプレイ上では風合いなどがお見せしにくいため、ここでは展示されたコンセプトと加工法についてのみ掲載します。

桜スケッチ / 原田浩司 Horoshi Harada

桜スケッチ / 原田浩司 Horoshi Harada

レタッチ及びプリントの作業内容

  1. PhotoshopのCamera RAWで、 ゴミ取りとフリンジ除去
  2. [段階フィルター]などで潰れかけたシャドーを調整し現像
  3. Photoshopの[レンズフィルター(LBB)]で彩色調整
  4. 手前の枯れた草の色を置き換え
  5. [フィルタギャラリー]→[ブラシストローク]→[はね]
  6. [レベル補正]→[トーンカーブ]で調整してプリント
  7. CansonInfinityサイトからダウンロードしたICCプロファイルにてプリント

Concept

この画像を受け取り、自分なりの表現を考えていたときに、ふと思いだした体験がある。

以前、桜を見に行ったときのこと、絵画をたしむ方が熱心に写生していた。雑談しながら、その方のキャンバスを拝見すると、桜にはその方の特別な思いが込められていると感じられた。それは実物の桜とはまた違うもので、この出来事を手掛かりに 「散歩の途中で美しい庚申塚の桜に会い、夢中でスケッチブックに書き留めた」をコンセプトに決めた。

プリントした厚手のコットンペーパーは、遠くから見ると写真、近寄ると手描きのスケッチに見えるように……。彩度をあまり強くせず、自宅のリビングに飾れるように仕上げた。

 

用紙:Canson / Infinity BFK RIVES
プリンター:EPSON PX-5V

古人の夢追 / 江田よしお Yoshio Eda

古人の夢追 / 江田よしお Yoshio Eda

レタッチ及びプリントの作業内容

  1. Raw現像ソフト[CaptureOnepro7]で、ベース画像、白とびの補完用、黒つぶれ補完用という計3枚の画像を作成し、Photoshop上でレイヤーとして重ねる(この時点で白黒化、コントラスト低下、および各濃度に合わせた階調調整を実施)
  2. ベース画像以外はそれぞれ[マスクレイヤー]を付け、必要個所のみを乗せる(手動HDR)
  3. 不要なオブジェクトを[スポット修正]で削除
  4. NIKの[COLOR EFEX PRO]の[ビネット]処理で周辺部を若干黒化させる
  5. NIKの[SILVER EFEX PRO]の[ハイコントラストストラクチャー]処理を実施
  6. Photoshopの[ソフトライトレイヤー]による焼き込みで細部の濃度調整
  7. 自作ICCプロファイルにて、和紙「おおむらさき」滑面にプリント(おおむらさきは通常は粗面が印刷面だが、滑面側の風合いが適していると判断)

Concept

課題の写真を見た時、私がまず感じたのは人の営みの儚さだった。

塚とは慰霊等の目的で昔の人々が建てたものであるが、写真の塚は表面に文字もなく、苔むして、今となっては何ために建立したのか言い当てることは難しい。

ただ、伝わってくるのはここが「特別な場所」であることだけだった。

傍らにある桜の大木が多くの花を咲かせる様が塚と対称的で、桜の花が生の象徴、塚は死とその供養を連想するように思えた。

当時どのような動乱があり、人々がどのような想いを抱いて塚を建立したのか。想いを馳せながら、荒々しいレタッチを施すことにした。

 

用紙:山十製紙 / おおむらさき
プリンター:EPSON PX-5V

庚申の宴 / 田上晃庸 Akitsune Tagami

庚申の宴 / 田上晃庸 Akitsune Tagami

レタッチ及びプリントの作業内容

  1. 画面内の整理
    桜と石碑の部分にフィーチャーしたいとの観点から、トリミングを行った。
  2. 背景の処理
    桜の背景にあった他の桜を除去し、[コピースタンプ]ツールで空に変換した。
  3. 全体の色
    NIKの[COLOR EFEX PRO]の[オールドフォト]を使い、古びた写真のように演出するとともに、全体にピンクを与え、桜の色合いが最も記憶に残っているような印象を付与した。
  4. 自作ICCプロファイルにてプリント

Concept

立派な桜の根元には、私の育った環境ではあまり見かけたことがない石碑が並んでいた。お墓のようにも見えるが、明らかに楽しげな雰囲気が漂ってくる。それもそのはずで、これは、お墓ではなく「庚申塚(こうじんづか)」というものらしい。庚申塚とは、道教思想に起源を持つ庚申信仰に由来する石碑である。庚申の日になると、体内にいる虫が、天帝に人間の悪事を伝えに行くのを阻止するため、夜通し宴会をしたり、天帝を祀ったりするそうで、それらを記念した石碑らしい。

きっと、昔の人々は、庚申の日を楽しみにして、夜通し楽しく盛り上がったのだろう。そんな昔の人々の宴会で盛り上がった記憶を再現する、これが私のコンセプトとなった。

 

用紙:ピクトリコ / WASHI 雲流(厚)
プリンター:EPSON PX-5V

日本画のような桜 / 蓮見浩明 Hiroaki Hasumi

日本画のような桜 / 蓮見浩明 Hiroaki Hasumi

レタッチ及びプリントの作業内容

  1. PhotoshopのCamera RAWで、潰れ気味のシャドー部を持ち上げて現像
  2. NIKの[SILVER EFEX PRO2] にてモノクロ化
  3. 全体をイエロー系でトーニング
  4. フィルターギャラリー、[色鉛筆]で風合いを調整
  5. 背景レイヤーから花弁のみを色域選択し、コピーした新規レイヤーを③の上に重ねる
  6. 5.をモノクロ化、レベル補正
  7. 全体の階調を微調整し、不要なものを削除
  8. 自作ICCプロファイルにて和紙へプリント
  9. プリント表面に日本画画材用パール粉を散りばめ、フィキサチーフにて定着

Concept

私は桜の花を見ると東日本大震災を思い出してしまう。あれは桜の花が咲く季節の直前の災害で、開花を心待ちにしていた多くの人がそれを見ることなく命を失った悲しみを想像してしまうからだ。

この木戸さんの桜の写真を見たとき、私はこの木の佇まいに惹かれた。そして、この桜を震災で亡くなった人に捧げようと思った。それには日本画のように優しく端正な桜であるべきだろう。現代のデジタル技術と日本の伝統芸術を融合させ、優雅な筆使いを感じさせるデジタル処理を丹念に施し、1400年の歴史を持つ和紙にプリントする。パール粉を散りばめ定着させて光の質感を持たせることにした。

 

用紙:アワガミファクトリー / 楮 厚口 白
プリンター:EPSON PX-5V

コノハナノサク / 佐藤素子 Motoko Sato

1版目
コノハナノサク / 佐藤素子 Motoko Sato

2版目
コノハナノサク / 佐藤素子 Motoko Sato

レタッチ及びプリントの作業内容

  1. PhotoshopのCameraRawで明るさを適度に調整し、[パラメトリッックカーブ]でブルーの輝度を落とす。
    Photoshopで諧調の反転をしたら色調を180度戻す。元画像には[トーニング]で樹皮と石塚をイエローベージュに、桜の花をアッシュローズにトーニング。それらを重ねて、の[フィルター]→[ぼかし(ガウス)]でぼかして、全体に色を乗せる(1版目)
  2. 樹肌や石肌のデティールを出したいので、NIKの[SILVER EFEX PRO2]でモノクロ化し、トーニング(2版目)
  3. 自作ICCプロファイルにて、1版目、2版目と2度のプリントを施す

Concept

元画像を見ながら仕上がりを考えていると、こんなフレーズが思い浮かんできた。

子供の頃から私にはコノハナは 空を映して蒼く見えた瞬く切ない気がした

この春 私は樹齢を重ねたコノハナに出逢った

コノハナが映しているのは私の心だ
瞬く切ないのは私の心だ

大切な人々が散って行った

コノハナが見守る時を
私もまた瞬く駆け抜ける
今はもう切なくはない

穏やかな春の空の下、浮かび上がってくる年月を経た桜の樹肌と石肌。幻想のように変化する空と桜花が対照的に感じられるように……。そんな雰囲気に近づけるため、元画像から2つの版を作成。プリンターで2回プリントすることに挑戦した。

 

用紙:トクヤマ / フレスコジクレー Type R
プリンター:EPSON PX-5V

想 い / 佐々木一弘 Kazuhiro Sasaki

想 い / 佐々木一弘 Kazuhiro Sasaki

レタッチ及びプリントの作業内容

元画像では、青空のほうに露出が合い、桜の花がアンダー気味になっている。桜の花と、石を主題とした時に、不要なものがあるので、その辺を整理し、掛け軸または、墨絵を連想させるようなレタッチ処理をすることにした。

  1. PhotoshopのCamera RAWでシャドー部を持ち上げ、[補正ブラシ]を使って花をより明るくて現像
  2. 空の部分を強調したものをもう一枚現像し、切り出してレイヤーを追加
  3. 不要な枝と石、草を削除し、レイヤーを統合
  4. NIKの[SILVER EFEX PRO2]にてモノクロ化
  5. プリセットフィルター[アンティークプレート]を適用し、各所を調整
  6. NIKの[COLOR EFEX PRO4]で[クラシカルソフトフォーカス]と[画像フレーム]
  7. EPSON純正紙「VELVET FINE ART PAPER」に自作ICCプロファイルにてプリント

Concept

桜の花には特別な思い入れがある人が多いだろう。

毎年、春の訪れを伝えるからであろうか。

10日程度の儚い開花期だからだろうか。

その色と形だからだろうか。

それとも日本人に受け継がれるDNAがあるのだろうか。

今回、この1枚を仕上げるにあたっては、まず、撮り手の桜の花への想いがあるのだろうと想像し、儚さと、遠い記憶にあるような雰囲気に仕上げることにした。

 

用紙:EPSON純正紙 / VELVET FINE ART PAPER
プリンター:EPSON PX-5002