世界のアート情報と先端技術を学ぶ FOTO SUMMIT レポート vol.2

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「海外で求められるプリントテクニック」株式会社トッパングラフィックコミュニケーションズ 小島勉氏

「海外で求められるプリントテクニック」株式会社トッパングラフィックコミュニケーションズ 小島勉氏

機材を揃え、プリント法を理解する

プリンティングディレクターとして国内外のさまざまな著名な仕事を手がけている小島さんからは、まずは機材を揃えることが第一歩。EIZOのColorEdgeモニター、顔料系フォトプリンター、ColorMunkiやi1 Pro2などのセンサー、ワコムのintuosタブレット高演色蛍光灯を揃えることから始めて、プリント方法として、プリンタードライバあるいはICCプロファイルのどちらを利用するのかを理解することだという。また、作品の最終イメージを描いたうえでプリントしていくことが大切だとも語ってくれました。もちろん、小島さんのようなプロにプリントを依頼する場合も同じだという。

「海外で求められるプリントテクニック」株式会社トッパングラフィックコミュニケーションズ 小島勉氏

シャープネスはサイズと用紙によって千差万別

一般的にシャープネスはPhotoShopのスマートシャープまたはアンシャープマスクでかける。A3、A2サイズなら一発でかけてもいいが、B倍くらいの大判になったらかけ過ぎになることが多いので要注意。被写体にもよるが、シャープネスの度合いはサイズや用紙による。あとでやり直せるようにスマートフィルター化しておくといい。さらにトーンカーブでハイライトを明るくし、シャドウ側を濃くすることで見た目のシャープ感を上げる方法もある。それをレイヤー化し、レイヤースタイルのブレンド条件でその効果の範囲を決めることもできる。また、塗りの度合いで効果を変える方法もある。

「海外で求められるプリントテクニック」株式会社トッパングラフィックコミュニケーションズ 小島勉氏

プロならではのシャドウ部の階調アップ法

シャドウ部がつぶれ気味で階調がないときはCameraRawフィルターが使えるので、背景レイヤーをスマートフィルター化してこれにCamera Rawフィルターをかけて調整していくと、あとで調整ができるので便利。また、画像をCamera Rawで開いて、中間調、ハイライト、シャドウそれぞれの階調を出した3種類のデータをつくり、その3つデータをPhotoshopでレイヤーとして読み込む。それぞれをまた、スマートフィルター化して、レイヤースタイルのブレンド条件で効果を変えることもできるし、さらにCamera Rawフィルターで調整していくことが可能だという。

「EOS 5Dsで表現する写真家たちの今~大判プリントの迫力を体験」写真家・石橋睦美先生&諏訪光二先生&長根広和先生&吉田繁先生/インタビュアー SAMURAI FOTO 冨川丈司さん

「EOS 5Dsで表現する写真家たちの今~大判プリントの迫力を体験」写真家・石橋睦美先生&諏訪光二先生&長根広和先生&吉田繁先生/インタビュアー SAMURAI FOTO 冨川丈司さん

キヤノンEOS 5Dsが生み出した新しい世界

今年6月に発売された世界最高峰5060万画素、35mmフルサイズセンサーを搭載したキヤノンEOS 5DsとEOS 5Ds R。その超高画素機で、写真家の石橋先生、長根先生、諏訪先生、吉田先生が撮影した画像を44インチという超特大用紙にプリントした写真を会場に10数点を展示。高精細な描写力を見ていただきながら、カラーマネージメントのプロである富川さんにMCを務めていただいて、EOS 5Dsの解像力の素晴らしさとそれによってもたらされたこと、撮影に際して注意すべき点や、この高画素機の出現によって、今後、写真の世界はどう変わっていくかなどのお話を伺いました。

「EOS 5Dsで表現する写真家たちの今~大判プリントの迫力を体験」写真家・石橋睦美先生&諏訪光二先生&長根広和先生&吉田繁先生/インタビュアー SAMURAI FOTO 冨川丈司さん

大判プリントすると高精細の良さがわかる

被写界深度の深い写真を好む石橋先生はこのカメラで撮れるか不安だったが、同梱のアプリケーション「デジタルレンズオプティマイザー」で画像処理するとF16~22まで絞れた。また、大判プリントしたときの繊細な描写力と階調表現は素晴らしい。しかし、ブレやすいこともあるし、ピント位置のズレも気になるので、ライブビューで拡大表示して丁寧に撮らないとダメ。それには被写体について事前によく調べておいて、きちんと構図を決めて、どこにピントを合わせるか把握しておくべき。いいレンズと悪いレンズの差がこのカメラだとよくわかるようになったという。

「EOS 5Dsで表現する写真家たちの今~大判プリントの迫力を体験」写真家・石橋睦美先生&諏訪光二先生&長根広和先生&吉田繁先生/インタビュアー SAMURAI FOTO 冨川丈司さん

8×10のように気合いが必要だった

数年前、スイスの雄大な風景の中を走る列車撮の画像を3×2メートルのサイズにプリントしたが、その場の空気感がそのままにはまだ伝えられないと思った。でも、今回は自分が撮影地で感じた空気感や匂いのようなものも伝えられたと思った。やはり、これが5000万画素なのだと感じたという。列車の撮影だと8000分の1にすることがあるし、列車を入れたい位置はたった一押しの瞬間だけ。それだけに集中してシャッターを押すが、いままで以上に魂を込めないと撮れない。それは逆にいえば、魂を込められるカメラであるということであり、プリントにもそれが出る。

「EOS 5Dsで表現する写真家たちの今~大判プリントの迫力を体験」写真家・石橋睦美先生&諏訪光二先生&長根広和先生&吉田繁先生/インタビュアー SAMURAI FOTO 冨川丈司さん

全倍プリントできる本気になれるカメラ

作家として活動したいと思ってきた諏訪先生はプリントをベースとして考え、24×36インチの用紙に300dpiでプリントするには7500万画素が必要だと10年前以上前から感じてきた。このカメラなら1.5倍補完すれば7500万画素にできるので、やっと本気になれるカメラが出てきた。画素数が上がるとダイナミックレンジが狭くなるという弱点もあるが、2000万画素機と比べても遜色がない。5Dsの解像感を活かしたいと撮り方も変わってきた。10年以上温めてきたコンセプトだが、ずっと撮れないできたものも作品性の深い部分に入ってきてくれるこのカメラによって実現できそうだという。

「EOS 5Dsで表現する写真家たちの今~大判プリントの迫力を体験」写真家・石橋睦美先生&諏訪光二先生&長根広和先生&吉田繁先生/インタビュアー SAMURAI FOTO 冨川丈司さん

回折現象に対応したDLOが抜群にいい

昨年、ロシアで写真展をやったときに44インチにプリントするデータを送るようにいわれたが、解像度が足りずにやむなくA1にプリントした経験を持つ吉田先生。そのときに44インチに300dpiで出力できるカメラがほしいと思った。EOS 5Dsの素晴らしさはカメラの性能もさることながら、デジタルレンズオプティマイザーの存在が秀逸。色収差はPhotoshopでも取れるが、レンズの回折現象はとれない。デジタルレンズオプティマイザーならこれを解決してくれる。35mmデジタルカメラで高画素で、回折現象にソフトウェアで対応したカメラは世界初といえる。

「EOS 5Dsで表現する写真家たちの今~大判プリントの迫力を体験」写真家・石橋睦美先生&諏訪光二先生&長根広和先生&吉田繁先生/インタビュアー SAMURAI FOTO 冨川丈司さん

再現性を究極まで追求するためのDLO

会場にEOS 5Dsの開発者の方が偶然いらしていたので、開発サイドからのお話も伺った。画素数を活かすには44インチくらいのサイズに伸ばすといいと思ったが、実際にこのサイズで見ると現場ではこう見えていると実感できた。長根先生の写真には列車の下の枕木まで見えるし、吉田先生の少女の写真は肌が本物のようで、髪の毛の柔らかさまで撮れている。石橋先生の桜は花びらの1枚1枚まで見えて立体感もある。じつはキヤノンではカメラの開発に先駆けて、DLOを開発した。これを使用するときはシャープネスをかけない。そもそもシャープネスをかけるのはレンズなどの光学系の影響で落ちてしまう分を補完するためで画素数不足でもエッジがなまる。5000万画素でようやく、レンズの落ち分のほうが影響が大きくなってきたという。

「ソーシャルメディアを活用して写真を見せる・印象づける」GANREF編集長 富樫真樹さん

「ソーシャルメディアを活用して写真を見せる・印象づける」GANREF編集長 富樫真樹さん
GANREF、facebook、LINEなどのSNSを使うことで、自分の作品に対する反応や意見を知ることができるが、プロモーションや集客もできる。意外に大切なのは文字情報できちんと入れておくことで検索エンジンから呼び込むことも可能になる。SNSの二股、三股によって、自分の写真をどんどん広げていけるという。

「ソーシャルメディアを活用して写真を見せる・印象づける」GANREF編集長 富樫真樹さん
「いいね」してくれた人をFBインサイトTwitterアナリティクスで分析することも大事。また、写真投稿の際に気をつけたいのはカラースペース。見る側のほとんどと同じsRGBにしておこう。Photoshopからは「書き出し」と「web用に保存」があるが、品質が同じでもファイルサイズが小さい「書き出し」がおすすめ。

*FOTO SUMMIT レポートはvol.1~4まであります。引き続きご覧いただけると幸いです。

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